後藤健二さんの哀しい最期を知っているからでしょうか、後藤さんが命をかけて伝えたかったことが凝縮されたように思える本でした。
両手を失った大人子どもを襲撃したのは、少年兵だったという事実にまずは驚かされました。
これだけの酷いことをできてしまう子どもって何だろう。
判断力や、物の理解もまだ未熟な子どもだからこそできることかもしれない。
次に、少年兵だった少年の言葉です。
家族を殺され、自身が連れ去られたうえに、否応のない軍事教育。
本来は憎むべき相手に従うしか、生きるすべがないという現実。
そして、表紙の写真に見える傷の意味。
麻薬を体に埋め込まれたということは、想像を絶することです。
麻薬によって、少年は道具になってしまったのです。
でも、その少年兵が軍事組織から逃れ、普通の少年として生きようとしています。
教育を受け、理性ある人間として生きようとしています。
理屈ではない現実を突きつけられて、常識的な傍観者ではいられません。
後藤さんは元少年兵と密着しながら、淡々と語り続けます。
もっともっといろんなことを、伝えるべき信念をもっていたのでしょう。
こんなことが、絶えることを祈りたいと思います。