この絵本は、北海道のアイヌコタン(コタン=村)に生まれ育ち、アイヌ文化の伝承者である萱野茂さん(1926-2006年)が
子ども時代の思い出を辿りながらアイヌ民族やアイヌ文化について
まとめた絵本です。
アイヌ民族の考え方や生活のしかたなどについて
文章と絵でわかりやすく書かれています。
家の建て方や間取りなど、アイヌ民族ならではの仕来たりがわかるものや、アイヌ民族独特のもりによる鮭の取り方、またそれらの生活に関わる儀式など、とても興味深く読みました。
昔のアイヌの子どもたちの遊びは、昔の日本の子どもたちの遊びと変わらないものも多かったようです。
和人によるアイヌ民族迫害の歴史についても少し触れられています。
(その部分については、淡々と語られている文章の中にも、私は萱野茂さんの静かな怒りを感じました。)
絵本の中に、ウェペケレ(昔話)が二つ収められています。
「スズメの恩返し」と「二つ頭のクマ」というお話です。
アイヌの昔話や民話を読んだことがない方にとっては
少し不思議な感じのするお話かもしれませんが、
アイヌ民族の考え方を知る上で、アイヌの昔話や民話は
とても重要だと思います。
タイトルの「アイヌ ネノアン アイヌ」とは
アイヌ語で“人間らしい人間”という意味だそうです。
萱野茂さんが子どもの頃、
お母さんはくりかえしくりかえし、言っていたそうです。
「アイヌネノアンアイヌ エネップナ (=人間らしい人間、人らしい人になるんだよ)」
と。
すべてのことに感謝を忘れず、
しなやかに自然と共存して生きてきたアイヌ民族の
精神的な豊かさを強く感じる絵本でした。