仕事を求め、季節ごとに北から南へ、南から北へと移動する季節労働者家族の幼い娘、アンナの心の中が描かれています。「ひとつの場所でずっと暮らすのってどんな感じでしょう・・・」と。
アンナは、自分を他の生き物にたとえて想像します。渡り鳥、野ウサギ、ハチ、大地に根を下ろす木・・。どの想像にも、一つのところに落ち着いて暮らすことへのあこがれがあります。たえず移動し、知らない土地、言葉がわからない場所での暮らしは落ち着かないのでしょう。でも、そこには同時に、家族みんなで力をあわせて生きている人たちの絆、強さ、しなやかさもあります。
外国の様々な文化や生活を描いた絵本はたくさんありますが、それらとは少し異なる視点からの絵本です。全く知らなかった訳ではないけれど、ほとんど気に留めていなかったこういう暮らしを、この絵本を読んで 初めて知ったような気持ちになりました。(巻末の編集部の解説も参考になりました)
静かな詩的な文章です。絵は、うすい色使いのすっきりとした感じで、そこに、コラージュが効果的に使われています。そして、アンナの子どもらしい想像が、ユーモラスに、のびやかに描かれています。