貝の子プチューはいつもひとりぼっちでした。おなかがすくと口を開けえさを食べ、おなかがいっぱいになると貝を閉めて眠ります。プチキューが眠っていると波の歌が聞こえてきました。どこへも行けず漂っているだけでつまらない、という波の独り言を聞いたプチキューは、自分は歩けるんだということに気づきます。遠くへ遠くへと足を伸ばしているうちに、いつしか知らない海に来ていました。そこで出会ったカニの子と喧嘩になったプチキューは…。
海のアトリエに迷い込んだような大きな美しい挿し絵と、詩的な文章。詩人である茨木さんの文と山内さんの絵の取り合わせは、装丁の高級さも手伝って、まさに芸術作品という感じです。最後の場面は、あまりに悲しくて、しばし立ち止まってしまいました。これが生きるということなのか。小1の息子は予想していなかった展開にとてもびっくりした様子でした。どんなことも受け入れる、人生の意味を考えさせられる、子ども向けというよりは寧ろ大人向けの絵本だと思います。