実は私がからすのパンやさんに出会ったのは、大人になってからでした。
子供に読み聞かせしたとき、一番ワクワクしてたのは恥ずかしながら読み手の私自身であったことを報告します。
このお話は、一見すると売れないパンやさんを家族の力が集まって人気のぱんやさんになってめでたしというシンプルなストーリです。
しかし、この物語のすごさは、いつの間にか読み手、聞き手すべての人間がこの本の中にひきずりこまれ、いずみがもりのからすになってしまうところにあります。
あるところではちょこちゃんたちの兄弟のひとりとなる。
あるところではからすのパンやさんのお客のひとりになってどのパンにしようか悩む。
あるところではパンを買うために飛び回る。
あるところでは、パンやさんの指示通り列を作る。
そして読み終わった時に、パンやの兄弟に戻ってたくさんのからすたちにパンを買ってもらって幸せを感じるのです。
このような体験ができる絵本はなかなかないです。
なぜこの本がそれを可能にしたのかと言うと、それは加古さんの
たのしくなるようなパンのレパートリーや、本当ににぎやかなからすのお客さんたちがいるから。
今日も誰かがいずみがもりのからすの住人になって、パンやをめぐって飛び回っていることでしょう。