動物絵本といえば、あべ弘士さん。
さすがに旭山動物園の飼育係をされていた経験から、動物たちのさりげない表情までもが生き生きと描かれている。
動物園を舞台にしたこの絵本では、あべ弘士さんが絵に徹し、文は二宮由紀子さんが書いている。
二宮さんもあべさんというパートナーに心強かったのではないでしょうか。
物語は奇想天外だ。
夏の朝、動物園の園長室にゾウの飼育係が大慌てで飛び込んでくる。
ゾウの「テンテン」が何者かに盗まれたという。
最初、この「テンテン」が何のことなのかわからなかった。よく読むと「ゾ」の字の右肩にある「テンテン」のことで、これがなくなったから、「ゾウ」は「ソウ」になってしまったというのだ。
びっくりした園長と飼育係は動物園を見まわることにするが、次第に二人の会話からも「テンテン」が消えていく。
つまり、いつの間にか「どうぶつえん」は「とうふつえん」になってしまうのだ。
この園長、「とうふつえん」なら豆腐を売るしかないと俄然張り切りだすのだから面白い。
一方、飼育係はゾウ以外の動物を確認して歩く。
キリンは大丈夫。トラもライオンも問題ない。ただゴリラは「コリラ」になっていた。
そのうち、「テンテン」だけでなく「マル」まで消え始めることに。
つまり「パンダ」は「ハンタ」になってしまっているのだ。
まるで井上ひさしさんの好きそうな話にどんどん展開していく。
でも、一体誰が犯人なのだ?
動物園(今では「とうふつえん」だが)の隣の水族館の看板を見ると、「ずいぞくがん」になっているではないか。
動物園でなくなった「テンテン」や「マル」が水族館に行ってしまっているのだ。
ここからは水族館の様子が描かれます。
あべさんは魚やペンギンを描いても、うまい。
そして、飼育係は動物園から出ていった「テンテン」や「マル」を水族館で集めだして一件落着。
言葉遊びや動物たちのしぐさや園長たちの人間たちの馬鹿げた表情など、楽しみ満載の絵本である。