タリバン政権下で女の子が男の子に扮して家族を支えた『生きのびるために』の第3話です。
第2作と同じで、一体、主人公パヴァーナに何が起きたの?という衝撃的なシーンから始まります。折角、第2作『さすらいの旅』の終わりで、お母さんと家族にやっと会えたというのに、どうしてこんなはじまり方をするのか?と怒りさえも覚えました。しかも、何が起きたのかをすぐには明かさず、現代と過去が交差して、だんだんと分かる後世になっています。
結局、タリバンが失脚したと言っても、まだまだ女性に対しての扱いがひどいアフガニスタンでは、こんな悲惨なことが起きてしまうのですね。これが、パキスタン人で史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマララさんにつながるんですよね。
そして、作者デボラさんの鋭い眼光は、タリバン政権からアフガニスタンを守ったとされるアメリカにさえむけられ、犠牲となった市井のアフガニスタン人にとってはタリバンもアメリカも正直なところ変わらないということまで描かれています。物事を一つの面からとらえるのではなくて、冷静に描かれているところに、どれだけ作者のエボラさんが、アフガニスタンを思っているかが感じられました。
希望を見つけてはすぐに摘み取られてしまう、パヴァーナ。それでも、生きのびていくところに、頭が下がる思いです。