本のタイトルに「石井桃子談話集」と付いているが、収録されているのは3つの対談、それと2つのインタビュー、それと聞き書きが数篇、さらにエッセイという構成になっている。
本のタイトルはそのうちのエッセイのひとつから付けられている。
興味をひいたのは、石井桃子さんの対談やインタビューの相手である。
大江健三郎、吉田洋一(この人は1898年生まれの数学者で、『零の発見』の著者)、吉原幸子(この人は詩人)、この3人は対談相手。
インタビューしているのは、川本三郎と金井美恵子(金井さんは作家)の2人。
対談はどちらがホストでもゲストでもなく、攻守互いにせめぎ合うような形になるが、インタビューとなるとやはりゲストである、ここでいえば石井桃子さんの輪郭から本質に至るまでもいかに浮彫りにするかが問われることになる。
そのあたりはやはり川本三郎さんはうまく、「本との出会い・人との出会い」と題されたインタビューでは浦和の生まれた幼年時代から日本女子大での学生生活、その後の編集者の時代、そして戦争、東北での農業生活とうまく話が聞き出せている。
最後は1950年に岩波書店に戻って少年文庫の編集に携わるところで終わってしまうのが、少し物足りたく、残念ではあるが、石井さんが観た映画の話などさすが川本三郎さんだ。
聞き書きの中で「本を読む」とはどういうことかと聞かれた石井さんは、「そういうことを考えたことがないくらい、あって当たり前のこと」と答えている。
そういう人だから、本のこと、子供たちのこと、図書館のこと、をずっと考え続けてこられたのだろう。