一見何だかいい感じの話にまとまっているようですが…色々と突っ込みどころ満載な気がします。
まず、「良いことを100個すればプレゼントをあげる」など、恐ろしい条件付き愛情のように私は感じてしまいます。
サンタクロースは、超人的な存在です。良いことをすればごほうびをあげるなどという了見の狭い存在ではないと思います。全ての子どもたちは、その行いに関わらずひとりひとり価値ある存在だと認められるべきです。サンタクロースという無償の愛の象徴が、世俗的な価値観に貶められている気がして、このサンタパスポートのシステムはどうも苦手です。
それはさておき、初めはプレゼント目当てで良いことをしようとしていた主人公は、周りの人々の喜ぶ姿を見て、良い行いそのものに喜びを見出だしていきます。動機は不純でも、そこから大切な学びを得る。それは素敵な成長だと思います。
ところが、そこに絡んでくるおばあちゃんが曲者ですね。
喜ばないのは百歩譲って良しとしても、手を貸そうとしている幼い孫に向かって「いま あんたのこと ムシしてやってんの。ヘッヘーンだ!!」なんて言う?何か抱え込んでいるものがないか、おばあちゃんの精神状態が心配になるレベルです。主人公が怒るのも無理はありません。
それにしても、このおばあちゃんの精神年齢の低さ、幼稚園児とおぼしき孫と同レベルです。
これが主人公と同じ年頃の子どもでしたらこのようなぶつかり合いも良く、爽やかな読後感になりそうなのですが、絵本でいい大人と幼児とのこのようなやり取りを見せられるのは違和感しかありません。
お母さんの言葉遣いも気になりますね。「それくらい じぶんで よめないの?」「あのこ…ぜんぜん あったまよくない!」こんな言葉を子どもに向かって日常的にカジュアルに使うお母さんが「普通」という感覚だとしたら恐ろしいです。「頭」を「あったま」という口語でわざわざひらがなで表記するのも品が良くないです。
全体的には、ラストで贖罪を求めるおばあちゃんとその願いが叶うシーン、全てはここに行きつくためのストーリーだったのではないかと感じられました。
そうなると、この絵本を求めているのはこのおばあちゃんのような大人でしょうか?
幼児向けの絵本に仕立てる必要性は全くないかと思います。
多くの子どもはシール集めが好きかもしれませんが、付録的に見返しに印刷されたサンタパスポートが子どもの気を引くためのアイテムにしか見えず…そのようなものでごまかさないでほしいです。