戦争、災害、事故、ある日突然人の心をかさかさにしてしまう出来事。そんな時に、慣れ親しんだ曲や、懐かしい曲、時には、それまでは馴染みのない音楽が突然、水のようにしみわたり癒してくれることがあります。
戦争で町が破壊され心までが壊れそうになった主人公の女の子に元気を与えてくれたのも、いつもは疎んじていた近所のおじいさんの奏でる音楽でした。それは、戦争に行っている音楽好きのお父さんが聞かせてくれた、そのおじいさんのチェロにまつわる話が心のねっこに残っていたからこそなのかもしれません。
タケカワユキヒデさんの訳は、女の子の語り口で書かれていて、子ども達に読み聞かせするときにぴったりだと思います。普通のですます調に直して読むと緊張感が出て、戦争の空しさと音楽の温もりがしんしんと伝わるような気がしました。