読み始めて私が瀬田貞二さんという名前を心に刻んだのは、いつだったのだろうと思った。
佐藤さとるさんの『ファンタジーの世界』を読み『ナルニア国物語』を知り、その本を読んで物語の持つ圧倒的な世界観に魅了され、翻訳家としての瀬田貞二さんを知ったのだと思う。
子育てを通して絵本の世界をもう一度自分の生活に取り戻した私は子どもと一緒に瀬田貞二さんの作品を読みつくした。
名作と呼ばれるものに共通するのは、魂のこもった生きた言葉なのだと思う。
『子どもの本のよあけ』を読みながら、瀬田さんの言葉をよく記憶して伝えてくださってありがとうと何度も思った。
「私は自らのあらゆる作品と能力と時間を、子どもたちに開放しなくてはならない」という瀬田さんの言葉がカバーに書かれているが、その言葉を読んだ時に涙が出た。
私たち大人はすべて次の世代に子どもたちに良質な文化を残すことを使命としなくてなならないのではないだろうか。
瀬田貞二さんからもらった命のバトンを縁のある子どもたちに渡していきたいそんな気持ちになった。