ガブリエル・バンサンに最初に出会ったのがこの絵本です。書店で見つけ、地味な色調ですが、その中に漂う静けさと温かさに惹かれて早速購入しました。
世捨て人のような生活を送る年老いたパブリーフと一人ぼっちの少年フェデリコの心温まる交流が描かれています。すべての人は成長し適応しようとする資質を持っています。しかし、資質を開花させるには、誰かが成長を見守り、成長に併せた援助をすることが必要です。世の中にたった一人、深く愛してくれる人がいれば、人は変わっていける、そんなことをこの絵本は教えてくれます。
そしてそのたった一人の人が、子どもにとっては親であったらいいなと願ってやみません。
よく育児は育自と言われますが、自称「わる」だったフェデリコがパブリーフの愛情で「いろいろなことがすき」になったように、パブリーフもフェデリコの愛情によって、大事なことを見つけるのです。
「行きたいところで生きる。いっしょにいたい人と、生きる。したいことを、する」それが、人間の本当の幸福であることを、この本は静かに問いかけてきます。地味な本ですが、この本は多くの人にとって、忘れられない一冊となるだろうと確信しています。この絵本を紹介できたことをとても嬉しく思います。