「ほんとうに人間は、いいものかしら」
母きつねの最後の台詞、記憶の奥底から蘇りました。
心に、いつまでも深くつきささっていたようです。
初めてのおつかいですら、母子の心情はいかばかりか。
ましてや人間と野生の動物との心情など、とてもとてもはかれない。
小さな子ぎつねの手、母の握らせてくれた本物の銅貨、
律儀で誠実な帽子職人の心もち、子守をやさしく歌う母の声・・・。
何から何まで、幸せな時間が漂う白銀の情景にあって、
母きつねのその言葉は二度、繰り返されるのです。
小学4年生だったか、子ぎつね役で学芸会に立った私です。
今でもこうやって自分を省みるのは、どうしてなんでしょう、
この作品に触れたからこその、ご褒美でしょうか。
どい画伯に、ありがとう。
新美南吉先生に改めて、感謝。