鬼につばを吐きかけられたために透明人間になってしまった男が、普通の体に戻りたいと観音堂にこもっているうち、人の物を盗むことを覚え、どんどん悪事をはたらきます。あれれれ、観音様に願いことをしてて、そんなことしていいの? 「これで観音様に普通の体にしてもらえれば、大金持ちだ」なんて、都合が良すぎない? 人間って弱いもの、自分の都合のいいように考えるものなんですね。でもこの男は、最後の一歩で踏みとどまります。偉い!良心を失わなかった!とほめていいものかどうかわかりませんが、えてして凡人はつい悪の道にはまってしまうもの、それを鋭く指摘した珍しい昔話(絵本?)だと思います。最後に悪に転がる「くもの糸」の逆バージョンですから、人間性善説かな。