綿の種をまいて育て、綿を収穫し、糸を紡ぎ、機織り機で織る。一枚の布ができるまで、果てしない工程が続く。
今、この国で生活していると、めったに見ることがない布を作る工程。昔は各家庭で、手作業で、ゆっくり時間をかけて作っていたという。
綿の植物としての特性、糸紡ぎや機織りの工程、布をめぐる世界の歴史。かわいいイラストと、写真でしっかりわかるように工夫されている。実際に体験したような気分になる。1冊で、社会の仕組みがざっくりわかるようだ。
私は糸紡ぎや布を織る体験をしたことがあるが、本当に手間がかかる作業だった。難しい作業で、練習して技術をあげないと商品にならない。それでも、無心に同じことを繰り返す時間は、忙しくいろいろなことに追われる生活から一時逃避できる素敵な時間だった。
しかし、奴隷として、この重労働を課せられた人たちもある。現在でも低賃金で長時間労働。安く衣料品が買える背景を考えると、モノだけではなく、人にもあらゆる命にも優しい社会が必要だとわかる。