安価で流通している牛乳を得るために、牛に背負わせているたくさんの苦しみや負荷を知った。
自然放牧ではない牛は、狭い牛舎で飼育されるため、運動不足は避けられず短命になってしまう。人工飼料を与えられるのも短命の原因になる。
乳製品の原材料が牛であると考える発想からは、牛は原料の元でしかなく、そこに生命の尊厳という気持ちは失われてしまう。
山地酪農という方法で、牛に負荷をかけずに生きる中洞さんの生き方は、考えさせられるものばかりだった。
乳脂肪分が、3.5%にならないと買い取り額が半値になってしまう点も驚きだった。
山地酪農を日本で継続していくことの難しさを、中洞さんが克服していく姿にも、頭が下がった。
自然の中で生きる牛たちの自然で美しい姿にも心打たれた。
いつか、中洞さんの牧場の牛に会ってみたいな。しあわせな牛乳を飲んでみたいな。
どんな生物も人間と同じ地平で生きている。根源的なことに気づかせてくれた一冊だった。