五味太郎さんの30歳(1975年)の作品です。現在の落ち着いた雰囲気とは一風違い、別人の作品と見間違いそうな荒さというか勢いと、色の多さが新鮮に映ります。
色んな肌の色や体型の人たちが集まってきて、楽器の演奏会が始まりますが、面白いことに、どの人も身体の一部が楽器になっているのです。ニヤッと笑った坊やの口がハーモニカなら、太っちょのおじさんのお腹は大だいこという具合。予想だにしなかったのは、お兄さんが取り出したラッパ。そんなところから?と驚きました。
一緒に読んだ息子とも、身体でできる楽器を考えてみました。息子が覚えたての“口笛”を吹いたので、僕は練習中の“トランペット”で合わせると、二人ともかすれてヘタだけど楽しい合奏になりました。大勢で読んだらもっと色んな楽器が出てきて楽しいでしょうね。
絵のほうは一見すると暗い印象なのですが、気前よく使った多彩な色使いなのに、反発せずにまとまって見えるから感心してしまいます。この2年後に発表された「おじさんのつえ」は、発想から絵のタッチ、色使いに至るまでホレボレする作品ですが、この間の試行錯誤の結果、五味太郎さんの画風が確立されたのかなと思えた一冊です。