1959年、移民として24歳の筆者は夫と一緒にブラジルで2年暮らした。全く言葉がわからないが、ブラジル人たちとごちゃ混ぜになって暮らしてみた実話をもとに書いた初めての作品。
たくさんの素敵な物語を紡ぎ出している作家の、意外な一面がたくさん見られる貴重な資料とも言える。
ブラジルについたエイコは、下宿先の一家の9才の息子「ルイス」と一緒にサンパウロのあちこちを行ったり来たり。ルイジンニョと呼ばれるこの子は、勉強はさっぱりで、イタズラばかり。嘘をついて通知表に母親のかわりにサインをさせようとしたり、やりたい放題。エイコはイタズラ坊主に振り回されながらも、ブラジルの庶民の生活をいろいろ体験し、受け入れ、間違いや文化の違いにもめげずに、どんどん面白いことを吸収していく。みずみずしい感受性と、まだ荒削りな筆致が愛おしい。読者の自分も、同じ町で生活しているような気分にどんどんなっていく。
後書きを読んで驚いたが、筆者は「自分が本を書くなんて、考えたこともなかった。」という。2冊目の本は、この作品から7年目に出たという。長い作家生活で、順風満帆のように勝手に思っていたが、人の人生はそんなに簡単ではないのだなと、改めて思った。
ルイジンニョ少年とエイコとの生活のように、一筋縄ではいかないいろいろな出来事を乗り越えて、今があると思え、いろいろな時代に書かれた本を読める幸せをゆっくりと噛みしめました。
昔の雰囲気と、今の暮らしが両方味わえる作品です。