ある日、保育園に新しいともだちが来ました。なんとぞうさんです。こどもたちは新しいものには興味津々、それもにこにこやさしいぞうさんでした。色々な遊びでぞうさんとなかよくしようとしますが、体が大きく、毛もなく、人間とは違うぞうさんとはうまくいきません。しかもみんなが一番大好きな、みんなで遊べるすべり台が壊れてしまう。ぞうさんもみんなもしょんぼりした瞬間、女の子がそっとぞうさんにゆだねてみます。
すると、ぞうさんはぞうさんのいいところをありったけ出します。しかも、自然に。ぞうさんの表情も一気に変わり、ぞうさんを中心としたこどもたちの結びつきが出来上がります。ぞうさんがリーダーのようにも見えますが、そうではなく、みながみな、みんながより楽しいものを求めて保育園の外に出ていきました。みんなが確実に成長、自分らしくなった素晴らしい瞬間でした。
ふりかえって初めの部屋を見ると、みな個々に遊んでいます。そしてみなを結びつけるのはすべり台でした。とっても楽しい、そのみんなを結びつけるすべり台が壊れてみんなが戸惑うのですが、そこはこどもの知恵で解決。自然の中でみんなで遊ぶのって最高だね!とみんな思いはじめました。いや、そうではなく、はじめからそれを求めていたのだと思います。
この絵本には大人が登場しません。こどもたちはこどもたちで解決できるんだよ、と教えてくれているようです。我々大人はこどもたちに関わりすぎなのかもしれません。おもちゃを与えるのでなく、自然に連れて行ってあげるのが一番なのでしょう。そしてその場でこどもたちは自分たちであそびを作り、育っていくのでしょう。
もう50歳間近のおじさんですが、こどもの頃からぞうが大好きでした。ぞうの絵本と言えば『まいごになったぞう』。ぞうのあかちゃんの姿が美しくて、今でも手元にあります。
今回それをしのぐようなぞうの絵本に出会いました。こどもどうしの結びつきを描いた、ものすごく素敵な絵本です。是非ともこどもたち、そしておとなたちにも読んでいただきたい絵本と思いました。