犬にまだ名前がないときは、ガスティン家では全く存在感のない犬でした。
どうして連れてこられたんだろう、どうして相手にしてもらえないんだろう。
それでも犬は従順、自分の境遇を受け入れていました。
犬に名前が与えられたとき、犬は家族になりました。
奥さんを亡くして寂しかったおじいさんの良き友となりました。
塀一つを隔てた二つの家の違い。
犬の境遇とともに二つの家族の姿をくっきりと浮かび上がらせました。
ガスティン家は寂しい家族です。
いつも追い立てられるように行動して、回りが良く見えないかわいそうな家族に思えてしまいます。
自分の家にいた犬がいなくなったことも、その犬がそばにいることもわからないのですから。
しっくりとしたお話にぴったりのモノトーンの線画。
柳田邦夫さんがこの本を選んだ意味が伝わってきます。