この物語の主人公「かまねこ」は本当はやる気もあり、
素直な新入り事務書記なのだが、同僚にデマを流され
事務長からの信頼も失い、所内で孤立してしまう。
どこにでもあるような話ですが猫の事務所のなかでの愚かな差別が
実は人間社会を表したもので宮沢賢治さんが
その猫の姿を通して、読者に問いかけてきます。
最後に事務所の物の意見も聞かずに一方的に事務所を解散させてしまう‘獅子’も
「大きな何か」の存在を感じ、幻想的で恐ろしさを感じます。
ですが、ぼんやりとした独自の柔らかな感じを出している
黒井さんの挿絵がこの緊迫したムードを緩和してくれているし
その反面、かま猫の泣きじゃくる様子が目に焼き付いたり
読後も余韻が残るお話しになっています。
仏教徒であったと言われる宮沢賢治独特の世界がしっかり現れています。