森の木から作られたいすは心を与えられました。
いすは、生まれてくる赤ちゃんのために買われて行きました。
このいすは、子どもが大好きでした。
どんな時も、子どもと寄り添って、やさしい時間を作りました。
でも、子どもが育つにつれて、いすは相手にしてもらえなくなるのでした。
物置きにしまわれて一人ぼっちにされたいすは、寂しい心で旅に出ます。
いすは歩くことができたのです。
森の中でおばあさんに拾われ、おばあさんの大事な人形のいすになったいすは、おばあさんがいなくなると古道具やにおさめられました。
そして、かつて赤ちゃんたった男の子が大人になって再会するのです。
こうしてまた、大好きな子どもと一緒になれるようです。
転居の多かった自分は、子どもの頃を思い出せるものは何も残っていません。
でも、自分の子が赤ちゃんの頃にもらった人形を、今なお部屋の片すみに置いてある事を思うと、このいすの気持ちになることができます。