黄色いレインコートの子が、夕暮れから明け方までに、ある物を探しに町中をかけ巡ります。一見不気味なその子の、意外な正体が最後に明らかになります。二度読みの時は、おどろおどろしい“もののけ”のようなモノたちも、一様に楽しげな仲間のように映りました。
力の籠った描き込みは作品への愛着に通じ、暗い色使いの中にレインコートの黄色だけが“パッ”と浮かんでくる感じは、森洋子さんの「かえりみち」や、鈴木よしのりさんの「ケチャップマン」などと同じ匂いがして、てっきり軽部さんの処女作かと思いました。売れる作品というよりも、映画でいうと単館モノのような、ここでしか観られないかも(でもここから全国区になるかも)という期待が湧く作品です。
装丁にも遊び心があって、カバーをめくると違うイラストの表紙が出てきました。映画フィルム風のカットは、確かに、パラパラアニメのように動画にしたら面白いだろうなと想像させてくれます。