映画のような絵本である。言葉少なでありながら、映画のシーンのように心にしみこんでくる。
かかしと老人と若者。この絵本の良さは、男どうしの心のふれあいだと思う。
老人が顔のないかかしを作った。少し不気味である。一人暮らしの老人は、かかしに語りかけながら、顔を作り、靴や軍手を与え、服を着せ、かかしを自分の家族のように作り上げていく。家族に先立たれ一人ぼっちの老人は、かかしを相手に、実は自分と対話しているのである。
若者が現れる。老人の仕事を一つ一つ手伝い始める。若者も家族を失った一人者である。
老人の注文に一つ一つ応える若者に、老人は心を許し、かかしに着させたものをひとつずつ若者に与えていく。老人は一人ぼっちではなくなった。
老人は若者と、言葉少なに話ながら実に自分の思いを伝えていると思った。ハーモニカのメロディを通しての心の通い合いも素晴らしい。最後のシーンで、老人が若者に「チェッカーゲームでもどうだい」というところは、絶妙である。
絵本としては、言葉少なで地味かもしれない。
ただ、饒舌で説明口調の絵本より、心に響いてくるのである。
息子と、一緒に感じたい絵本である。