滝平二郎さんの版画の世界が独特で、他の絵本にはない独特の世界観があります。その版画ならではの、黒の線がきつめの絵が、子供の頃には、随分と怖く感じられたのを覚えています。
現に、娘もちょっと怯えながら、話に聞き入っておりました。
でも、このちょっと暗い感じの絵が、このお話にはぴったりです。特に、モチモチの木がパッと明るくなる場面が、対比的に素晴らしく美しく幻想的で大好きです。
昔、私の田舎のおじいちゃんの家は、トイレが外にあり、確かに夜のトイレはとても勇気がいりました。街燈などない田舎の夜は、本当に真っ暗で怖かったものです。だから、豆太の気持ちは、私にもよくわかります。
また、じさまの優しさも、すごく心に染みてきます。
親を早くに亡くしてしまった孫が、殊更かわいくて仕方がないのでしょう。
そのじさまの優しさは、臆病者の豆太の中にも、やはり生きているのでしょう。
自分が強くなくては、人に優しくして上げられない。
だから豆太も、ほんの一晩、じさまのために強くなりました。きっと、豆太なら大人になる頃には、父親に負けないくらい強い男になることでしょう。
とっても、じーんとくる優しいお話です。