言わずと知れた名作ですが、黒井健さんの絵が、美しく、幻想的に、物語の世界を一層引き立てています。
娘も、真っ赤な彼岸花が咲き乱れる山里の風景に、思わず「わあっ」と声を上げていました。ごんぎつねの表情や後姿も、生きる強さと、哀しみと、気高さにあふれ、ぐっと心に迫ってくるものがあります。
そして、迎える結末・・・。どっと感情が押し寄せ、涙で声が詰まってしまいました。「かわいそうだね。」と言うのが精一杯だった私に、娘は、
「でも、うれしかったんじゃない? だって、わかったもらえたから。
死ぬ前にわかってもらえて、うれしかったと思うよ。」と、私の目をまっすぐに見て言いました。
子どもはそんなふうに受け止められるんだなと、ドキッとして、そして、ごんぎつねの魂が救われたような気がして、少しだけ嬉しくなりました。