あなを掘る。やってみると意外と容易いことではないと気づかされます。幼い頃、落としあなを夢中でこしらえたことがありました。場所によっては石が多くて手がしびれたり、柔らかすぎると掘った端から崩れて、思うように掘れなかったのを思い出します。絵本の土はあな掘りに理想的な土だなと感じたのは、僕の邪推ですけど、小学1年の息子は、せいぜい公園の砂場で、小さなスコップでトンネルを作ったくらいの経験しかないのだろうなと思うと、「これではいかんな、でもまだ遅くないぞ」と反省させられました。
自分がすっぽり入れる大きなあなとなると、掘った経験のある人の方が少ないでしょうから、掘ってみたいなと憧れる気持ちもある一方、一人であなに入るのを想像すると、恐怖で身が縮むようでもあります。息子も「あなを掘りたい。そしたらまた埋めたい!」と言うものの、「自分は入りたくない!!」と怖がっている様子でした。
表紙の画。あなに体を沈めて空を仰ぎ見た景色は、静寂とともに安らぎを感じて、じわりじわりと優越感に浸る時間が流れているように見て取れました。あくまで想像ですので、実際に息子とあな掘りに挑戦してみて、その通りか試してみたいものですが。
みなさんのレビューを見ても、子供がというよりは、それなりにあな堀りを経験した大人が、あなの中から空を見上げるいう発想に、ハッとさせられた方も多いようですね。そういう意味でも、大人向けの作品なのかもしれませんね。