折りしも、アイヌの先住民族決議の為され、図書館でこの本を目にし、思わず手にとりました。自然を敬い、物を大切にし、子どもやお年よりも大切にする社会を守ってきたアイヌの文化と考え方はこれからの世界に役立つと思います。必要な分だけ漁をし、獲り分け与え合う暮らしや、文字がなく口承文化であることにも魅力を感じていました。残念ながら差別などで苦しい歴史が今も続いていることは作者であり国会議員であるかやの氏の活動で知りました。物語の中ではきつねに漁の分け前を与えず山へ追いやろうとする人間に対し、チャランケ(談判)するきつね。それは自分のためではなくすべての生き物のため、喉も張り裂けんばかりの叫び。読む者の目にも心にも突き刺さる。絵は北海道の豊かな色彩を、落ち着いた色合いで写し取り、人物の衣装、生活用具にもわかりやすく描かれていて素晴らしい。文章が長めなので小学生以上からがよいかも知れない。