卒園式を終えたゆうきくんは、夜、布団で眠れないままでした。
小学校になじめるかどうか、不安だからです。
すると、
「ゆうきくん、ゆうきくん」
どこからか、声が聞こえます。
ゆうきくんは、びっくりしました。
だって、声をかけてきたのは、通園バッグだったからです。
通園バッグは、これから「おめでとうかいぎ」を始めますと言い、仲間を呼びました。
このあと、ゆうきくんは哺乳瓶や小さな靴、トレーニングパンツなどの、様々な懐かしい物に再会します。
それらの物は、大きくなったゆうきくんが忘れていた物ですが、ゆうきくんをずっと覚えていた物です。
「おめでとうかいぎ」はそれからも続き、ゆうきくんを励まします。
ページをめくるたびに、懐かしい物が目に飛び込んできます。
お子さんにとっては忘れていた物であり、これからも忘れていていい物かもしれません。
けれど、親の私たちにとっては、そうではありません。
もう一度抱っこができたら。
もう一度おんぶができたら。
若い親御さんにはピンとこないかもしれません。
ですが、子育てがひと段落した親にとっては、鼻の奥がツンとくる、切ない絵本です。