乗り物絵本はいっぱいあるけれど、
旅する人々それぞれの心情に焦点をあてたものは、他にないかもしれません。
文は一行もありません。
絵の本で、上野駅から金沢駅まで、夜行列車に乗って旅をするのです。
どこか懐かしくて、家族みんなで語り合って楽しめるページの構成に、
どうしても手放せない宝物のような価値を見いだしました。
時代はスピード、先進技術、スマート、デジタル。
夜行列車で一晩中揺られて、寝るにも手狭で窮屈で、朝なんて
ゆっくり歯も磨けない、こどもは走りまわるし、年寄りには棺桶同然。
それでも、見知らぬ人と話をしたり、食べ物を交換したり、
田舎の話を聞き合ったり・・・時間の濃さは、格別のものがありました。
家族が想像して、それぞれ文章を紡いで、ワイワイ楽しめるなんて、
西村繁男さんのすばらしい絵の本に、乾杯です。感謝。