梶山俊夫さんの絵によってやんわりと楽しい世界に仕上っていて息子と笑って読みましたが、はて自分が“たからげた”を手にしたら自制が効くんだろうかと自戒の気持ちが沸きました。
貧しい暮らしのおっかさんと息子がいまして、ある時おっかさんが病気になりますが薬を買うお金がないので、貸して欲しいと“ごんぞうおじさん”の所に行きますが、けちで欲張りなおじさんは文句ばかりで貸してくれません。途方にくれた息子の前におじいさんが現われて“転ぶと小判が出る”という“たからげた”をくれました。そのおかげで小判を手に入れた息子は薬を買うことができてめでたしめでたし。
ここで終わればただの孝行話しですが、この後“ごんぞうおじさん”がやって来て前の借金の方にと“たからげた”を持って行ってしまってからはちょっとシュールな世界になります。どこまでも笑顔の“ごんぞうおじさん”が少し不気味でもあり哀れでもあります。息子は“ごんぞうおじさん”の成れの果てを面白がっていましたが、僕は最後に大金を手にした息子が、変わらず謙虚でいられるだろうかと少し心配してしまいました。やりすぎて没頭する人をよく〜虫といいますが、ほどほどにしないと怖いよいう教訓の絵本ですね。
「こどものとも」年少版にしては読み応えがあり、年長さんでも十分楽しめる作品だと思います。