実際にあった出来事をベースにしているので、せきれい丸の無謀な出港を軽く見ることは出来ません。
定員をはるかに越えた乗船客は、終戦直後の混乱と、生きるために必死だった社会で、ある意味必然だったのかもしれません。
物語の中で描かれている、りゅうちゃんとひろしの親友関係は、死んだ者と生き残った者との象徴として描かれています。
りゅうちゃんを助けあげたと思った父親が、人違いだと解ったときの失望はいかほどでしょうか。
そのお陰で生存できたひろしの、りゅうちゃんに対するやましさはいかほどでしょうか。
しかし、そんなことも包み込んで、実際の生活が営まれていくのです。
たくましく生きていこうとするひろしの決意が、眩しく描かれていました。