世界中のあらゆる国の母親の姿を描いたこの絵本には、ある特長があります。
それは絵を担当しているカンタン・グレバンさんの名前が先にあって、文を書いたエレーヌ・デルフォルジュさんの名前があとにあること。
文と絵が別々の作者でできている絵本はたくさんありますが、普通は文を書いた人の方が先に印字されています。
二人の経歴を見ても、エレーヌさんはこの本が初の著作で、カンタンさんはボローニャ国際児童書展に何度も入選している絵本画家です。
となると、カンタンさんの絵が先にあって、エレーヌさんがあとから文章を書いたのかもしれません。
でも、一組の母と子の絵は2つずつ。
そこにつけられた文章は、長いものもあります。
そうなれば、お二人で話しながら作っていったのかもしれません。
その創作過程が気になりますが、読者が絵を見ながら自由に物語を紡いでも面白いと感じました。
訳者の内田也哉子さんは、樹木希林さんがお母さんで、自身三人の子どもさんを育ててきました。
その内田さんはこの絵本について、「世界中の女性の生き方。まなざし、何に憧れて生きているのか、何を恐れ、何と日々向き合っているのかといった本質的な部分が、ママン=母親という1つの切り口からあぶりだされている」と感じたといいます。
この絵本に出てくる母親がすべて幸せな人ではありません。子育てに苦労している母も、子供から離された母もいます。
そんなさまざまな母と子の姿から、幸せとは何だろうと考えている自分に気づくはずです。