マッチ売りの少女と聞いて、ある種のイメージがありました。標題紙には「アンデルセン、グリム兄弟、ビアスに敬意を表して」とあったので、なんとなく期待するものもありました、この絵本は、まったく想定外のところで私をびっくりさせてくれました。
アルメットは、貧しい女の子。裏社会で生きるストリート・チルドレン。
当然のことのように、表社会では相手にされず、マッチ(象徴的です)は売れず、虐待されます。
これ以上生きていけない。
と、願ったことが自分の欲しかったものへの物欲。
願いがかない、嵐のように物が降ってくる。(これは革命かも)
地上に降ってきた多量の物資を、病弱者、貧困者、高齢者、職を持てない人に分け与えていく。(これは福祉です)
突然の状況に市長は抑え込もうとします。(政治権力の介入)
相手が子供だということで、演説ぶっても相手にされず市長は退散。(権力の限界)
福祉への理解者がいろいろなもの寄付を始めます。(社会現象)
ジャーナリズムが、ニュースを広めます。(情報化)
集まった物資が、戦争や災害への支援物資として使われます。(国際化)
大人になったアルメットは組織を率います。(???)
なんとも攻撃的な絵本なので、煙たがられたのでしょうか、絶版状態とか。
それでも、ウンゲラーを知る上で貴重な本です。
ポイント1: 絵本の中で、空から降ってくる物。その中のテレビにウンゲラー自身の写真が組み込まれています。主張を見ました。
ポイント2: 谷川俊太郎の訳です。とても歯切れがいい。
ポイント3: 冒頭に出てきたビアスは「悪魔の辞典」の著者。アメリカのジャーナリストであり、コラムニスト。ムムム…。
この絵本、ウンゲラーがアンデルセンやグリム兄弟の暗示より、ビアスのシニカルな姿勢を意識していることを表しています。