大阪生まれの田島征彦さんが、沖縄県人であるかのように、実際に体験してきたことのように、絵本の中に渾身の怒りをぶつけて描きあげた作品です。
平和だった沖縄の一家族が、沖縄戦の中で壊されていくさまが、苦しいほどに響いてきます。
国を守るために兵隊になった父に続き、中学生の兄も鉄血勤皇隊として軍隊に入ります。
残された国民学校二年生のせいとくと妹と母親は、戦争の中で、何をできたでしょう。
戦いの残酷さと、保身的な兵隊たち、狂気のように死に急ぐ群衆、どれもが不条理です。
そして、生き残ったものに対して、沖縄はどうだったでしょうか。
アメリカ占領下の沖縄のお話として描かれた物語です。
「沖縄が日本に戻ったら、アメリカの軍事基地なんかなくしてしまうさー」というせいとくの決意が痛いほど響いてきます。
沖縄返還50年を知っていて、タイムスリップしてのこの言葉を、虚しさだけで終わらせてしまったら、田島さんがこの絵本に込めた魂は、浮かばれないでしょう。
彼の地で戦争が終わりません。
戦争は不条理です。
不条理が続いたら、人は正義や平和を信じられなくなるような気がします。