こちらも、ロシアの民話をもとにトルストイ流にアレンジした「トルストイの民話」の一編です。
おじいさんの代まで隣同士の二つの家族が仲良く暮らしていました。
が、息子イワンとガブリーロの代になり大喧嘩が、起こります。
たった一つの「卵の行方」という、些細なことから始まります。
家族総出の罵りあいから、取っ組み合いの喧嘩そして裁判沙汰へ。
お互いに「自分の方が正しい」という気持が、相手への深い怨みや憎悪へと変わり、冷静に向き合うことができず、両家の溝を修復できないものにしていきます。
悲しいかな「怒り怨み」は、増幅し最後にガブリーロがイワンの家に放火し、村の半分を灰に変える大火事へ。
タイトルの「火」は、争いの事であり、本当の火事でした。
イワンの父親の「すぐ謝りに行くがええ。……。」は、信頼関係を取り戻すには、自分から和解の手を差し伸べること。
右のほおを叩かれたら、左のほおを差し出す。
そうすれば、“相手の良心に響かぬわけがない”と、いう言葉が重く感じられました。
さて、全てを失った両家。
ガブリーロの放火の現場を目撃したイワンは、父親の言葉を思い出し…。
大なり小なり人間生活の中で、摩擦は生じます。
人間の中に授かった「怨み・憎しみ・怒り」の感情は、神に与えられた大きな試練のようにも思えました。
読後、身につまされる思いがしました。
息子の感想は、「疲れた〜〜〜!」でした。