主人公カール・イブーは、すべてがきらい。自分のことも「醜いし、年寄りじみているし、人から好かれるわけがない。」と全否定。人も嫌い、町も嫌い…。そんな彼でも、ふとさみしくなるときがある。
生まれ変わる前のカールはとっても偏屈で確かに「むさくるしい」。でも、失敗を繰り返しながら、やっぱり友達が欲しい、と素直に認め、大声で泣くカールに、読んでいる私もいつの間にか同情し、胸が熱くなりました。
挿絵は現代アートのような、ちょっと大人向けのタッチです。カールの淋しさと、徐々に温かな心になっていく様子が、見事に描かれています。
カールが自分を変えようと決心した場面で、部屋の壁にかかっている写真は、カールのお母さんとおばあさんでしょうか。変わり者のカールとは対照的に、とても愛情にあふれた優しい笑顔です。母親というのは、子どもがどういう状況の時でも、こんなふうに温かく見守っているものなのですね。
7歳の娘にも十分理解できましたが、もう少し大きくなってから読むと、さらに深く味わえるのかもしれません。