夏休みに祖父のもとで過ごすことになったフー子の、不思議な体験を描いた物語。
かなり読み応えのある作品ですが、読後には寂しさを感じてしまうほど。
それだけ夢中になって楽しんでしまったということです。
普段は何ともないその場所が、全く別の世界に変化するこのお話。
キーとなる時計。
アン・フィリッパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」と共通している部分が多いと感じました。
が、大きな違いが。
それはこの物語で現れる異世界には、底知れぬ恐怖と不安が付きまとうのです。
それはフー子の祖母が行方をくらませたその場所であるからでしょうか。
いくつもの謎が少しずつ解けていく展開に引き込まれていきます。
クライマックス。フー子の行く末を左右する場面は、息をもつかせぬ緊迫した雰囲気が見事に描写されています。
そして、読後もまだ残る謎が、いつまでも余韻となっていることが、何だか心地よかったりします。