期間限定下宿をしながら、小説描きを通して新しい境地へ踏み出して行く女子中学生の心の成長を描く。
といっても頼りないものではなく、自分でしたいことをしてみて感じる気持ちを大切に、未来を楽しいと信じられるようになること、思春期の確かな足どりを描いている。
ちゃんとそれなりの理由での下宿には好感。
自分の好きなことをする、させてもらっている。その中で筋を通すようにたてた目標、配膳や洗い物を手伝うとか成績を落とさないという最低限の自分ルールのなかでもって楽しく自由を満喫するのが清々しかった。
なにより共感したのは、今まで気付かなかった家族であるがゆえの煩わしさからの解放感。
コップいっぱいの紅茶を部屋に持って上がって、机に座ってホッとするところなんか、わかるわかるーって感じ。
素敵な文具屋さんで買ってきた気に入りのノートに、なにを書こうか迷うところもわかるし、お話を描いたあとの開放感や、嫌なことをお話で昇華させてしまうのもよくわかる。
男の子の気になりかたも妙にリアル。
主人公と同じ年頃で読んでいたら、ものすごく羨ましくなっただろうな。
いわゆる家出物に分類していいと思うが、家出してやる!という攻撃性はなく、しっかり地に足をつけて、周囲と自分を見極めながら自分探しする女の子向け。
オバサンは母子家庭についての作者の厳しい言葉が印象に残りました。ほんと妙にリアルだなぁ。
ひとつ言うなら、エピローグを書いて欲しかった。