征矢という名前と林明子さんの絵ということで選んだのですが、読み始めて征矢清さんの「やまぐにほいくえん」や「ゆうきのおにだいじ」の征矢さんの作品とは少し違う雰囲気を持った作品であることに気付きました。
おばあちゃんの子守唄や山おんなであるおばあちゃんなどから、どちらかというと安房直子さんの「花豆が煮えたころ」に似たものを感じました。
読み終わって、表紙をもう一度確認してみると、征矢清ではなく征矢かおるでした。
なないろ山のふもとに住むさち。近くにおばあちゃんのうちがあり、さちはおばあちゃんの子守唄を聞いて育ちます。
ある日、山に異変が起こりますが、おばあちゃんの体調が悪くなり、さちが代わって出かけます。
さちが山に急ぐ場面にはスピード感がありましたし、ふくろうに捕らわれる場面ではドキドキしました。
低学年向けの児童書ですが、さちが山を救おうと必死になるところ、おばあちゃんによる伝承の持つ力や、さち自身に備わった力の開花など、読み応えがありました。
また、林明子さんの絵が話によくマッチしていて作品の世界を盛り上げていると思いました。