宇梶静江さんの古布絵二作目です。
前作の『シマフクロウとサケ』に比べて数段と刺繍が繊細で、絵に取り込まれた様々なものがとても素晴らしく縫いこまれています。
海津波と山津波の被害に会って、上の台地にいたリぺシカ・コタンの人々は助かったけれど、下の台地のランペシカ・コタンの人々の家は海に流されてしまいました。
何かの教訓かと思ったのですが、ちょっと違います。
神に助けを求める6代の人の世を生きたおばあさんは、海の主はおばあさんを六つの地獄に落としてしまいます。
むごい話のようにも思えますが、ちょっと違います。
おばあさんは村の守り神の開けた穴からセミの神として地上に戻ることができました。
セミが地中にいる年月を地獄に見立ててのアイヌのお話でした。
アイヌの人たちは様々なものを神として崇めていることがわかります。
鍋であったり、セミであったり、自然や生活にあるものをみな神として崇める信仰をもっているのですね。
津波のシーン、海に流されながら神と対話するシーン、壮大なスケールの内容が布地で緻密に表現されていることに感動しました。