昔話の絵本っていろいろ出ていて選ぶのに迷ってしまいますよね。私は、そんなとき、絵や言葉が丁寧で美しいものを選ぶようにしています。
この絵本の絵は、日本画家 秋野不矩によるもの。物語にふさわしい色彩でとても美しいと思います。子供たちが日常、日本画に触れる機会なんてめったにないもの、なのに絵本では、たやすく目にすることができるのだから、そういう絵本を選ばなくちゃもったいないって思います。
私が子どもの頃から知っているうらしまたろうって、なんとなく竜宮城にとどまってなんとなく里が恋しくなって里へ帰って・・っていう感じだったのですが、この絵本の「うらしまたろう」はストーリーに必然性があって、子どももすごーく納得するんです。
たとえば、竜宮へ着いたたろうは、おとひめの父竜王に、
「もう、おまえはひとのこではない。りゅうおうのこになったのだ」と言われる。聞いている子どもにはこの竜王の言葉が重くて、「ああ、たろうは、だから竜宮にとどまるんだ」と納得するみたい。
里が恋しくなる場面では、おとひめに面白い部屋があると案内されて行ってみると、春夏秋冬4つの窓のある部屋で、冬の窓を開けたら、北風の吹き荒れるふるさとの冬の海がみえ、急に里が恋しくなった。「そりゃそうだよね、帰りたくなるよね」って読んでいて、たろうの気持ちに添うことができます。
文章・画とも、とってもおすすめです!