娘を寝かしつける際には、歌を歌ってあげました。生後3日目に母子同室になったときからの日課でした。
あのときは本当に困ったのです。
6人部屋だというのに、娘は消灯時間が過ぎても泣きぐずり続けるし。仕方がないから、抱っこして廊下に出たのです。暗い廊下を突き当たりまで歩いて病室が集まる場所から離れ、顔をのぞき込みながら、小さな小さな声で歌ってみたのでした。
思わず口をついて出たのは「シューベルトの子守歌」でした。
娘は不思議そうにこちらを見ています。
つづいて「カナリヤ」。そして「ゆりかごのうた」。
歌詞の中身なんか気にしている場合ではなかったのです。ただただ頭に浮かぶメロディーを口ずさんでいました。
歌っている間はじっとこちらを見つめて、ぐずりやんでくれる。
ああ歌って不思議だな、我が子に歌をうたってあげられるのはいいものだな、としみじみ思ったものでした。
あなたの18番は何ですか?
ベビーカーでおでかけするとき。抱っこしておでかけするとき。
おでかけのときにも、黙々と歩くだなんてもったいなく思われたので、いつも何か口ずさんでいました。バックミュージックがあったほうが、赤ちゃんだって自分自身だって楽しいですものね。秋は「まっかな秋」。冬は「山のこもりうた」。早春の頃は「どこかで春が」。…
けれども、童謡って、メロディーは覚えていても、歌詞がうろ覚えになっているものばかり。
そこで最初に購入したのが、この「うたえほん」でした。
挿し絵の明るい色調。ふっくらとあたたかみあるかわいらしい動物たち。
大きすぎないサイズ。そして、どの曲にも楽譜がついているという親切さ!
「ゆりかごのうた」に始まって、「おはなしゆびさん」 「かわいいかくれんぼ」 「むしのこえ」…わたしたちが幼稚園の頃までになじんだ、懐かしくて楽しい歌が26曲掲載されています。
童謡の歌詞というものは、あらためてこれだけ読んでみると、なんとうつくしく、叙情的で、味わいのあるものなんでしょう。
「詩の本」としても大切に持っていたい一冊だなあと思われてきました。