昔話のひとつとして有名なさるかに合戦のお話の中には、残酷さを避けるためか、猿に柿をぶつけられた蟹がケガをするだけにとどめてあるものもあります。しかし、この本では、「早く大きくならないとハサミでちょん切るぞ」と柿の木を脅迫(笑)するシビアな蟹の言葉や、柿につぶされて死んだ蟹から子蟹がうじゃうじゃ生まれてくるところをごまかしなく描いていて好感が持てます。
でも、出てこないんですよねえ、おにぎりが。おにぎりと柿の種を交換するんじゃなかったのか……。子どものころ読んだ絵本では、猿がもらったおにぎりがとてもおいしそうで印象的でした。それに、食べたらなくなってしまうおにぎりより、育てれば見返りがいっぱいある柿の種の方が得なんだという教訓も得ていたような気もします。そういう部分がないのはちょっと物足りないかな……だから星4つです。