ちょっと古臭い感じがするこの絵本をすすんで手に取る人は少ないかもしれません。私も読み聞かせの本で何度もお奨め作品として取り上げられているのを見なければ、きっと読まなかったと思います。
小学校で6年間、級友からも先生からもバカにされてきた男の子が自分の価値に気づいてくれた新任の先生と出会い、卒業式で得意なカラスの鳴きまねをして周囲の認識を一変させる話です。
雨の日も風の日も一日たりとも休まず学校に通い、自然に対する知識が豊富で、カラスの微妙な鳴き声の違いにも気づき、それを模写できるほどの観察力、表現力を持っていた男の子。
自分たちはそれに目を向けようともせず、そこにいないものとして男の子の存在を黙殺してきた。その行為がいかに残酷なことであったかに気づいた人々が悔悟の涙を流すシーンでは、涙がこみあげてきました。
いじめの残酷さと、人はひとりひとりかけがえのない存在であるということに気づかせてくれるお話です。