弱者への愛情をもって温和で噛みしめるような内容が多い丘修三さんの作品の中で、この話については丘修三さんの激しい思いが叩きつけられたような作品になっています。
いじめを受けるチエ。
どんどんエスカレートしていくいじめと、どんどん自分にこもってしまうチエ。
原因は何でしょうか?
この話の中には、原因がいっぱいありました。
それはいじめっ子でもあり、友だちでもあり、先生でもあり、そして大人、家族…。
その中で考えなければいけないのは、チエも友だちの京子も、そしていじめっ子だった和男も苦しんでいるのです。
それぞれにその苦しみは違うけれど、原因を大人に押し付けるのも理不尽ではあるけれど、子どもたちに押し付けるのはもっといけないことだと思う。
あまりに判りやすいお話です。
そして、書き続ける丘さんは、「この物語を明るく終わらせることができなかった」と語っています。
いじめはあまりに身近にある問題であり、他人事のように子どもに判ったような説教をしても解決できない問題なのでしょう。
その意味で、このお話は子どもに与える本として的確な指摘をしていると思います。
いじめの加害者であった和男が一番苦しんでいるのだろうな。
京子に「ありがとう」と言えたチエの将来には希望があります。
その言葉を受けた京子は歩いていけるのでしょう。
このお話は、読者に問題提起していながら、終結していません。
子どもたちの心にしみこんでほしい話です。