おもしろとうさん、お話の最初はちっともおもしろくないんですよ。「きょうは疲れてるんだ」「きょうは一日ゆっくり寝ていたいんだ」「とうさん眠いんだがなあ」。
「うちとおんなじよ!」って声があちこちから聞こえてきそう。
お仕事大変なんですね、きっと。お疲れさまです。でも息子にしたら、とうさんのいるきょうは特別な日。なんとか公園に連れ出します。
木登りを「ちょっとやってみるか」、するととうさん、急にターザンごっこをはじめます。とうさんの中にいる子どもだった男の子(しかもかなりわんぱくのいたずら坊主)がよみがえったのね。
さらに水道でいたずら(うちの息子は「噴水だ〜」と大笑い)、走って走って池の中に突入! いいぞ、いいぞ、おもしろとうさんに変身です。
おすもうさんになったり、夕陽に照らされて大男になってみたり、息子は「だから とうさんて だいすきさ」。
これは作者さとうわきこさんの日本全国のお父さんへのエールです。あとがきにこう書かれています。
「いたずら小僧がこころのなかで、ムクムクと大きくなって、とうさんにとってかわると、とうさんは急に心が軽くなり、たまりにたまったストレスから開放される。
そんなふうにして、いきいきとうさんが、あっちにもこっちにも生まれたならば、どんなにたのしいことかしら」。
本当ですね。お疲れのお父さん、一度お試しあれ!
この本には「かあさん」が出てきません。それがいいんだと思います。「もう、とうさんったら、休みの日ぐらい遊んであげてよ!」なんて言ったら台無しです。
かあさんは息子ととうさんのやりとりをそっと見守っていましょうよ、ね。