この絵本、読んでいて、心から感嘆してしまいました。
初出が、月刊雑誌「こどものくに」という、日本仏教保育教会が編纂しているシリーズの絵本なので、
すこーしばかり、「教え」色があるかしら?
でも、これは頭の固いお説教本ではもちろんありません。
だって、せなさんのご本なのですからね。
とんちがきいていて、面白い。けれど、人間関係というものを垣間見させてくれる絵本です。
となりのタヌキが大嫌いなうさぎ。
きらいきらい、だいきらい、とお月様に訴えると、お月様が
じゃあ、私がひどい目にあわせてやろう、と言います。
でもひとつだけ約束しておくれ。
一月の間、タヌキにうんと親切にしてやりなさい。
そうすれば、私も約束をまもるよ
早速、お月様との約束を守って、タヌキに親切にしてやるうさぎ。
さてさて、このお話、いったいどうなるのでしょう?
うまいこと、作ってありますねえ…
せなさんの魅力が、この絵本にぴったり合っていて、すばらしい出来栄えです。
お月様のセリフや、うさぎとタヌキのケンカシーンなど、子供をぐっとひきつけ、
そして、あくまでさりげなく、すんなりと教えを説きます。
子供だけではありません。親にもぐっとくる絵本です。
最後に少し固いことを書きます。
この絵本、絵本として最上級だと思いますが、
その他に、このお話は、子供の、読書力のレッスンにもなりそうだと思いました。
それは、「どうして?」がこのお話の中にたくさん含まれているからです。
どうしてうさぎはたぬきが嫌いなのか
どうしてうさぎはたぬきに優しくしたのか
どうしてうさぎは、たぬきに優しくしてもらって困っているのか
うさぎはどうして、最後に「やめてください」と泣いたのか。
もちろん、根掘り葉掘りきいたのでは興ざめですから、
お話をすべて読み終えてから、1つ2つきいてみる程度が一番よいと思うのですが。
絵本は楽しめればよい、と私も考えるのですが、
読書力は、他者とのコミュニケーションの力、会話の力、人の身になって考える想像力などに直結するのでは、と私は考えているので、
たまには、ただ読み聞かせるのではなく、絵本を使ってレッスンしてみてもいいのでは、と思います。