古事記や日本書紀のエピソードに想を得た作品。
日本の五穀(米、麦、粟、稗、小豆)の起源を描いています。
イネという9歳の視点で描かれます。
イネはおばあと暮らしていますが、ある日、家にお侍がやってきて、
食べ物の催促をするのです。
調理中のところを見ない約束でおばあはご馳走を作り始めますが、
目やに、耳くそ、鼻くそ、おならなどを混ぜていたのです。
お侍はこっそりそれを見て激怒し、おばあを殺してしまいます。
そのおばあの遺体から、五穀が芽吹く、という訳です。
人間が捨てる汚いものが、作物(=食料)を育てる、という事実が切々と伝わってきます。
あとがきにそのあたりが丁寧に書かれてありますから、
そこもしっかり読んでほしいです。
伝承神話からの再話、ということで、
シンプルな淡い単色で描かれ、タイムワープしたかのような印象です。
唯一夜光貝だけが独特の色調となっており、まさしく光を感じました。
大胆な物語に、伝承の威力を感じました。