ベスコフのお話にしてはめずらしく、妖精も小人も登場せず、色とりどりの花や深い森の美しい自然描写もありませんが、ペーテルおじさんの人柄や生き様がすばらしく、それだけで十分に心惹かれる作品でした。
ペーテルおじさんは、春夏秋冬、子どもたちに夢を与え続けてくれるサンタクロースのような存在でしょうか。通訳、先生、お医者さん、修理やさん、おもちゃ職人・・・1人で何役もこなしてしまうペーテルおじさん。ここまで万能になることは、とてもできないけれど、ペーテルおじさんの心根だけは、ほんのちょっぴりでも見習いたいものですね。
娘も、いろんな質問をしながら、ペーテルおじさんの「おしごと」を理解しようとしていました。
「通訳って何?」
「Jがいつもやってることだよ。じいじ、ばあばと、パパがお話できるように助けてあげたり・・・」
「にわとりの病気ってどんな病気?」
「・・・」
「卵を産まなくなる病気じゃない?!」
ペーテルおじさんなら、きっとすぐに治してくれるでしょうね。
そんなペーテルおじさんの心をしっかりと受け継いだ子どもたち。物語の最後で、ペーテルおじさんが今は亡き人になったことを知り、少し悲しんでいた娘でしたが、やがてルッレがペンキやさんになって、立派にペーテルおじさんの家を守り続けていることを知ると、“ルッレおじさん”の笑顔と共に、再び娘の顔にも笑みが戻りました。
命(血のつながり)だけでなく、こうやって心もつながっていくんだなあ、ということが、小さい子にも自然と理解できる素晴らしい絵本だと思います。決して派手さはないけれど、大きな夢が心の中いっぱいに広がっていくのを感じます。